
あちらこちらの庭先を彩るシラン。風に揺らぐ姿にも風情が
庭木の緑が次第に色濃くなり、牡丹やバラなどの大振りで可憐な花が庭を彩る5月、足元にもさまざま可憐な山野草が次々に開花します。

4月、ひっそりと春を告げてくれたシュンラン
葉脈がまっすぐな単子葉植物で花の形が特有で人気のラン科の山野草も数多く花開き、それぞれの色と形で春を演出してくれます。
庭先にもそんなランの花が。
4月のシュンランに続いて5月中庭木の足元を飾ってくれたのは、シラン。野生では順接滅危惧種だそうですが、丈夫で育てやすくあちらこちらの庭先を飾っているのが見られ、存在感があります。
ややすぼんだ形の花が弾力のある弓状の茎に数個付き、風にたなびく様子もなかなか風情のあるもの。近付いて花を観察すると、遠くから見た印象とは違い、ラン特有の派手やかな形をしています。切り花でも長く持ちます。

近付くと、ラン科の花らしい華やかな形が
ラン科特有の偽球茎は、漢方薬として用いられているそうです。
芝生の飛び石沿いに、ネジバナほどの背丈のかわいいラン科植物?を発見。

アメリカ原産のマツバソウラン
調べてみると、マツバソウランでした。葉の形が松葉、花の形がウンランに似ているところからの命名だそうですが、実はオオバコ科でアメリカからの帰化植物。
かわいいので、抜かずに取っておきたくなります。丈夫で群生するというので、時期をずらして芝生の中に出てくるネジバナに影響が出ないように、すみ分けて咲いてくれてばいいと思います。
庭木の下一面に白い小さな釣鐘型の花を花茎に連ねて咲かせる春を代表する山野草、スズラン。
このスズランもラン科ではなくキジカクシ科。命名は葉の形がランに似て、花が神事や祭りに使われる鈴のようであることからだそうです。

ヨーロッパやロシアでも愛されてきたスズラン。こちらは日本スズランで、ドイツスズランは花茎が高く花数も多い
5月1日はフランスが発祥の「スズランの日」で、愛する人やお世話になっている人にスズランを贈る習慣があり、もらった人には幸運が訪れると言われているといいます。
清楚な白い小さな花は多くの国で愛されているのですね。ダーク・ダックスが歌っていたロシア民謡の「すずらん」を思い出します。
そんな印象とは異なり実は有毒植物のスズランはギョウジャニンニクと葉の外形が似ていることなど、注意も必要だとのことです。
昨秋小さな苗を植えつけたオダマキも無事、根付いて花を咲かせてくれました。山を切り開いたところに建てられた小学校時代、学校の周りの山林で見たオダマキが懐かしく、ご近所から分けていただきました。
オダマキとは、カラムシや麻糸を巻く道具のおだまきに花の形が似ていることから付けられた名前だそうです。

ミヤマオダマキは日本の山野草
オダマキと言えば、舞を命じられた白拍子の静御前が披露した義経を恋い慕う歌があります。
「しづやしづ しづのをだまき くり返し 昔を今に なすよしもがな」
(倭文(しず)の布を織る麻糸をまるく巻いた苧(お)だまきから糸が繰り出されるように、たえず繰り返しつつ、どうか昔を今にする方法があったなら)
独特の花の形、落ち着いた色合い、うつむきかげんに咲く優しげな姿が魅力です。
色や形が数多くあり、日本・アジア・ヨーロッパに約70種が自生しているというオダマキ。日本に自生しているのはヤマオダマキとミヤマオダマキ、外国産のものは品種改良の上園芸品種として広まっているようです。

西洋オダマキは大きく花数も多い
いただいたときには同じような葉で区別がつきませんでしたが、紫色のミヤマオダマキは丈が低く色も姿もいかにも日本固有な感じ。一方の西洋オダマキは丈も高く、花数も多く一目で西洋風と違いがわかります。
うまく根付いてくれて1本の花茎に薄紫の花房を十数段にも重ねたのはジュウニヒトエ。キランソウ科で立ち上がって咲き、花が幾重にも重なる姿が十二単に似ていることからの命名だそうです。

キランソウ科のジュウニヒトエはその姿が十二単に似ているところから
根づけばランナーを伸ばして四方に広がってグランドカバー植物として楽しめます。小さいながら気品が感じられ、愛される理由がわかります。
オダマキの苗に付いてきたタツナミソウも可憐な花を咲かせてくれました。来年はもっと増えてくれるのが楽しみです。
小さな山野草もはるか昔から人々とのつながりがあり、愛され守られてて今日に引き継がれているのが感じられます。
参考
レファレンス共同データベース http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000098543